葬儀教室

葬儀教室

葬儀の時だけ見られる人間模様。
こうして解決!お葬式。
Studio Chiko by Dracaena & akao 

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 病院からのご搬送。

 ストレッチャーを寝台車に納め、
 いよいよ、ご出発。

「お待たせいたしました。
 それでは、出発させていただきます。
 ご家族は、こちらに・・・
 ・・・あら、ご家族の方は・・・?
 ・・・一緒にここまで、ついて来られましたよね。」

「ええ、病室から、ここまで。・・・あら?どこへ行かれましたかね。」

「どうしましょう。」
     
「おられました―。ここです。」

 皆の心配を、知ってか知らずか、
 助手席で、準備万端 シートベルトまでして、

 
「ほな、行こか―。」

 って、お父さん、この後は、ペースを合わせてくださいね。


                

 

 
☆できたら早く、とめてほしかった。

「あと少しで、開式になりますので、皆様ご着席くださいませ。
 お導師様の、お経が始まって しばらくしましたら、
 私が、ご案内いたしますので、
 
先ず、喪主様から、 お焼香をしていただきますね、
 よろしいですか?ご主人からですよ。」

「あー、わし? ほな。」 と立ち上がろうとする。
「いえいえ、まだです。
 まだ、始まってないですから。」

「え?! はじまってない?
 いつ、始まるの?」

「もう少しで、はじまりますから、
 私が、合図したら、お焼香しましょうね。」

「ほいほい、ほな。」 って、また立ち上がろうとする。
「いや、まだなんです。
お寺さんが、お経をはじめてからですよ。」

「まだ? いつはじまるの?」
「もうすぐです。
 はじまりますよー。って、マイクで言いますからね。
 それからでいいんです。」

「それから? いつ?」
「って
、お父さん、モー。
 すみません、父のことは、大丈夫ですから、
 早く、仕事進めて下さい!」

あとの説明は、間に合いますかねー。



 

                    

 

 

お寺での準備。

“ワ―ッ!ギャー!ドタドタ―ッ!”

<オ-、今日は、ちっちゃい子供さんが多いな。にぎやかで…。

 子供さんには、お悔やみも関係無いか。>

 

「おばちゃん、これ何?」

 「これは、おりん。」

「こっちは?」

 「これは、太鼓と魚鼓、木魚。大きいね―。」

「おばちゃん、これは?シンバル?」

「銅鑼と妙鉢、大きいでしょ―、でも、触ったらあかんよ、お願いね。」

 「・・・・。」

 

「それでは、喪主様、ご親族の方は、こちらのお席にどうぞ。」

“ワ――ッ、ギャーッ、ドタドタ―ッ”

「もうすぐ、お式が始まるから、お席に座ってね、静かにしましょうか。」

「エー、なにー、何がはじまるの?」

「おばあちゃまのお見送りのお式よ、
  お寺さんが、来られるから、座って待ちましょか。」

「え、ここに、誰が来るって?」

「お坊さま、それ、あの、お経を読んでくださる偉い人。」

「ふーん、幼稚園の園長先生よりもえらい?」

「とにかく、座ろう。」

 ソワソワ ガヤガヤ ゴソゴソ…

 

「お寺院さまのご入堂です。」チーン、チーン。

<あッ!>

ドタドタドタ―ッ 
 ゴンゴンゴーン! ジャンジャンジャーン、ドンドンドドーン!!

「コラーッ!そんなこと!したらだめでしょ!
   こっち来て!・・すみません、すみません。」
と、親御さま。

 <なかなかやるやん。そこまでやるとは、思わんかったけど-。>

         

 

 

……えっと、3階のデイルームにご家族さんが、いらっしゃるから…って。

あ、あそこかな?たくさん集まっているけど、皆さんご一緒かな?


「あー、ここ、ここ。葬儀屋さんやろ? まあ、座って。

 しかし、急なことやったから、なんかびっくりしてね、めっちゃ元気やったから。

 電話もろて、すぐに来たけど、間に合わんかったわ。あー、わし、中村。なあ。」



「ほんまやでー。年のわりに、元気やったから、すぐに退院するって。

 まだ、1週間やで、かわいそうに、家に帰りたいって…。グス

 それで、どうするの?これから。どうなんの?家族葬で頼むわー。あ、私、山下。」



「ぼく、松本、これは、山口、こっちは、…・。」


「あーはい、ご本人のご準備が整いましたら、お家にお帰りになるのか、

 このまま式場の方にお連れするのかを……。」



「あかん、家は、無理。家の中ムチャクチャで、寝かせるとこも無いで。」

「ほな、このまま火葬場に連れて…。」

「あかんやん、このままって、お棺に入れなあかんし、24時間どうのって、ねえ。」

「よくご存知で。」

「知ってる知ってる。直葬ってよく言うけど、24時間経たなあかんねんね。」


「それは、ええから、どないするの?」

「それでは、このまま、弊社の会館にお連れしましょうか?」

「え、そんなんできるの?こんな夜中でもええの?助かるけど。」

「ご事情もお有りのようですし、大丈夫ですよ、お連れできますよ。」

「ほな、そうして。」「そやそや、そうして。」


いよいよ、病院からご出発。なんと、全員、式場まで、ついて来られた。


「あー、ええやん、ここ、家族葬にちょうどええわ。」

「そ、家族葬ね。」

「それでは、早速ですが、今からご納棺させていただきますけど、

 その間に、この後のご説明をさせて頂こうと思いますが、

 ところで、あのー、ご親族はどなたでしょうか。」


「--。おれへんねん。身内は、誰も。ここにいるのは、皆、他人。」

「いや、今、連絡とってる。この人、息子がいてんねんけど、長い間 音信不通で…。」

   <で、どうやって、連絡を・・?>

「無理やろ、来るわけ無いで。本人が言うてたから。他も身内は、無いって。」

「あー、それでは、お手続きが・・。ご連絡取れるまで、お待ちしましょうか?」

「いや、だから、無理やって。」

   <でも、連絡してるって・・・、今・・。>

「まあ、落ち着け。本人は、前から、わしらに、何かあったら、頼むでって。」

「そやねん、この人、人はええねんけど、お金が無い。」

   <・・・・・>

「もう、私らで、見送るしかないねんわー。

 ほんま、体調崩して、入院したけど、自分で頑張らなあかん、と思とったのか、

 家に帰る!って、杖は振り回すわ、車椅子で、検査に行くときも、

 車椅子の安全ベルト切ってしまうし、元気やってんよー。

 こんな事になるとは、本人も思ってなかったやろしー。

 な、皆でなんとかするから、葬儀屋さん、頼むわ、家族葬でお願いします。」


   <家族葬で…?!>

「わかりました。病院の方からも、ご事情は、少しお聞きしていましたし、

 皆さんにご協力頂いて、あたたかいお見送りにしましょうね。」  


 
 ちょっと、大変でしたが、忘れてはいけないものを、気づかせて頂いた「家族葬」でした。